2024年9月

	令和6年9月
① 神野祐紀雄	・切り売りの西瓜にラベル十一度・帰省せし孫に家中乗つ取らる
② 遠山園生	・蜂屋柿熟すを待ちぬそつと触れ・夜の長しラジオに終活学びをり
③笹尾純子	・軒端よりもぎ取り食らふ郷の柿・さまよへる老女や白き彼岸花
④中根弘子	・虫の声生きる証しやミシン踏む・そこそこに生きて八十路や秋ひと日
⑤池上悦美	・古民家や見下ろす信州りんご畑　・一日のあつという間の酔芙蓉
⑥木田美智子	・古里の赤き柿の実眼裏に・秋刀魚焼く匂ひ纏ひて急く家路
⑦ 加藤太一	・袋掛け甘き梨の実願ひつつ・梨摘みや今年限りの老夫婦
⑧西尾えり子	・秋彩を纏ふ電車は遠くより・蟋蟀の鳴き始めの日旅支度
⑨ 三浦鏡子	・草むしり見上げる空に飛行機雲・散歩道土手にちらほら彼岸花
⑩磯村通子	・盆の月ひとの声きく尼の寺・涼風の風筋みつけ背伸びする
⑪水井峰子	・品名を決めて買物かごに梨・アリゾナの山赤く暮れ九月かな
⑫梶野弘美	・胸元の白桃の蜜拭ひをり・庄内の水面に映る鰯雲