2023年10月

	令和5年10月
① 神野祐紀雄	・補聴器を入れてにわかに虫すだく・車つき座椅子で移る草刈女
② 遠山園生	・子ら使ひはざ掛け急ぐ日暮れ時・菊花展父の名札の水を遣る
③ 青木志津	・秘湯宿星降る野天風呂の秋・新涼や浅間山に大き雲流る
④ 新城岩夫	・秋うらら帰国の便り娘を待てり・ベランダに秋を連れ来ぬ鰯雲
⑤ 中根弘子	・風ゆれて美しき風情や彼岸花・我が庭を狭しとゆるる酔芙蓉
⑥ 池上悦美	・秋涼しうたた寝の孫転がれり・約束を忘れて悲し金木犀
⑦ 木田美智子	・コンバインの音勇しや秋うらら・秋萩の枝垂れて散るる花香かな
⑧ 加藤太一	・秋うらら鳥形おどし空を舞ふ・昼の虫庭にちょろちょろ宵待つか
⑨ 長谷川弘代	・ペンギンのよちよち散歩秋うらら・缶蹴りの鎮守の杜も神の留守
⑩ 西尾えり子	・秋うらら犬の欠伸を覗き込む・ためらわず鬼皮くるり栗ご飯
⑪ 三浦鏡子	・植物園楽しき句会秋うらら・朝夕に爽やかな風頬を撫で
⑫ 磯村通子	・満月や隣りへついと声をかけ・手秤の狂ひぱなしや残暑なほ
⑬水井峰子	・賜りし米寿の祝ひ秋うらら・玄関に秋風鈴の昼下がり