2023年6月

	令和5年6月
① 神野祐紀雄	・来年の今日も集ふと五月尽・炎昼の眉間も爪も縦の皺
② 遠山園生	・庄内川中州隠して梅雨上がる・水しぶき簗の上の子等大はしゃぎ
③ 青木志津	・握る手のふんわり開き蛍の灯・蚊帳に放つ蛍火追ひていて夢路
④ 新城岩夫	・しとやかに栴檀の花咲きにけり・憶良詠む花散るあふち寂しけり
⑤ 中根弘子	・眼福や百千の色の百合の園・木漏れ日に登りつめたる時計草
⑥ 池上悦美	・腰かがめ孫とあぜ道蛍狩・水無月と名付けし人のその心
⑦ 木田美智子	・闇夜から涌き出づるごと姫蛍・「もうすこしよ」下山の一声風涼し
⑧ 加藤太一	・蛍火をまろやかに追ふ蛍の火・蝶の往きつ戻りつ同じ花
⑨ 長谷川弘代	・山道を抜けて古民家桐の花・紅型のタペストリーや夏きざす
⑩ 西尾えり子	・昔日や箒振り立て蛍狩・縫ひ上げを解き浴衣の糊付ける
⑪ 三浦鏡子	・木漏れ日の散歩道にも若葉風・梅雨明けに旅を企画と友の告ぐ
⑫ 磯村通子	・「おはよふ」と声をかけつつ庭苺・指櫛をつかひ乾かす洗ひ髪
⑬水井峰子	・相聞歌のごとく行き交ふ夕蛍・卯浪越え三番グリーンに乗る白球