2022年5月

	令和4年5月
① 神野祐紀雄	・水温む姉と目合はす二年ぶり・春風や再燃もなく八十路越ゆ
② 遠山園生	・身を正しふつと一息風炉手前・口癖は「何も要らないよ」母の日
③ 青木志津	・手鏡の髪未だ豊か風光る・初夏や大の字仰ぐ鳳凰図
④ 新城岩夫	・ちむどんどん朝ドラに湧く里の夏・夏嵐脚腰しなう八十路翁
⑤ 中根弘子	・青春を思いださせし君影草　・風の中名前やさしき踊子草
⑥ 池上悦美	・鯉のぼりひつそり置かる車椅子・手水舎の浮かぶ紫陽花雨の中
⑦ 木田美智子	・初めての句座やどきどき花の雨・姿なき鶯の声こだまして
⑧ 加藤太一	・荒石組む城門跡や草青む・あまた咲き命短し花どうだん
⑨ 長谷川弘代	・山間にそつと差し色藤の花・旋回し水面にタッチ初燕
⑩ 西尾えり子	・解体の雨戸は「くの字」すみれ草・春暑し姉さん被りの母の顔
⑪ 三浦鏡子	・川岸の土手一面に茅花咲く・藤棚の蕾ふくらむ小公園
⑫ 磯村通子	・菜種梅雨長なが続く回送車・下町はシャッター街なり燕の巣