2021年9月

	令和3年9月
① 神野祐紀雄	・黒揚羽大きく息を翅にまで・新涼の高層ホテル埋立地
② 遠山園生	・母搾る一升瓶のヘチマ水・コスモスや風に馴染みて風に添ふ
③ 青木志津	・先客の秋蝶休む丸太椅子・素焼き鉢に麻がらの煙魂迎え
④ 新城岩夫	・故郷の球児来たりて甲子園・旅詠みし句友旅立ち夏去りぬ
⑤ 中根弘子	・おしゃれしてどこにも行けず今朝の秋・昏鐘や色なき風に地の無事を
⑥ 池上悦美	・まんじゅしやげ一列に咲くみごとさよ・マス寿司の色香も味も秋うらら
⑦ 加藤初代	・稗を抜く帽子に群るる赤蜻蛉・今の世は案山子の衣装取り取りに
⑧ 加藤太一	・姉川の豪傑親子墓に菊・色変えぬ唐崎の松枝吊られ
⑨ 長谷川弘代	・たおやかに電柱上る葛かずら・涼新た二の腕白き湯船かな
⑩ 西尾えり子	・素焼き鉢に麻がらの煙魂迎え・憩いの場ソプラノ響き秋に入る
⑪ 三浦鏡子	・香り立つ煙揺らめく秋彼岸・群れなして板取川を鮎下る
⑫ 磯村通子	・警戒のアラートつづく秋出水　　　・盆過ぎの出入はげしき町工場