2021年5月

	令和3年5月
① 神野祐紀雄	・邂逅の主治医は白寿春の海・外科病棟に移る療友春の雷
② 遠山園生	・遠山や覆ふさみどり夏来る・老い二人武具を飾りつ呟けり
③ 青木志津	・記憶なき母の寝姿春袷・揚雲雀着地は遠き三角州
④ 新城岩夫	・夏木立水面に揺れて風を呼ぶ・再会の友の笑顔や風涼し
⑤ 中根弘子	・匂ひくる修道院のライラック・ほうたんや盛りとばかり空の青
⑥ 池上悦美	・黄砂降る華北平原語る母・五月にはフラワームーン登るとよ
⑦ 加藤初代	・ランドセル並びて覗く春の池・春眠のイヤホンごしに囁けり
⑧ 加藤太一	・花越えて伊吹を望む紙飛行機・花の日も飛ばす苦心の紙飛行機
⑨ 長谷川弘代	・零れ種の双葉に支柱朝の庭・庭若葉一夜の雨に寄り添ひて
⑩ 西尾えり子	・春白藤の短き房も重たげに・「偶然ね」と足早に春日傘
⑪ 三浦鏡子	・空青し藤棚ゆれる曼陀羅寺・重き実を小枝が支ふ夏蜜柑
⑫ 磯村通子	・夕暮れの湿りうれしや茄子植えて・ここからは私の陣地あさり掻く