2021年2月

	令和3年2月
① 神野祐紀雄	・歩のままに脱ぎ遣る靴や入園式・撮る度に肺の瘢痕山眠る
② 遠山園生	・若き女子冬の風きりバイク便・底冷に目覚む朝刊入るる音
③ 青木志津	・食い散らす鳥の嘴跡蜜柑山・呼べど来ぬアダモの歌や雪が降る
④ 新城岩夫	・コロナ禍や炬燵籠りの日暮れかな・うたた寝の夢のローマは炬燵かな
⑤ 中根弘子	・山河はや佐保姫らしき空の風　・軒川を製紙の煙春浅し
⑥ 池上悦美	・温たかき父の墓前に猫柳　・春きざすもしや恋文古手紙
⑦ 加藤初代	・廃線や今は農道冬の旅・着ぶくれて写経の筆の重きこと
⑧ 加藤太一	・蕉翁没年句の碑小雪舞ふ・山裾の衆徒の首塚冬ざるる
⑨ 長谷川弘代	・餅を搗き霰作りし父恋し・枝揺らし梅の蜜吸ふ目白かな
⑩ 西尾えり子	・掌の餌を山鳥掠め飛ぶ・鉢を陽に蕾の覗く福寿草
⑪ 三浦鏡子	・歯科医院出でし翁にみぞれ降る・風花を車窓に映す無人駅
⑫ 磯村通子	・初午や片手に下げし油揚げ・換気の手ゆるめぬ部屋の寒さかな